フランスに来た理由(2)

以前書いた内容では不十分だったり、きちんと言語化出来ていないな、と感じていたので、この度改めて「フランスに来た理由(2)」を書きたいと思います。

ただし「前回書いた物が全て真実ではなかった」という訳ではないので、もしお暇があれば前回の書いた物を踏まえてお読みいただければ幸いです。

 

 前回書いた物

僕がフランスに来た理由 - マサルの仏蘭西滞在記

 

◆現状

渡仏してから1年が経ち、来年からフランスの大学で社会学を学ぶべく、フランス語の勉強をしています。

本来ならば2020年6月までだったビザが世界的なパンデミックのおかげで半年伸び、フランスに滞在するチャンスを得る事が出来ました。大変な事も沢山ありましたし、今後の状況次第では帰国も考えられますが、とりあえず今は前向きに捉えています。

 

 

◆フランスに来た理由

以前は色んなことを書きましたが、フランスに来た理由は「日本社会から逃げたかった」そして「初めて訪れたパリが衝撃的だった事」だったな、と今は感じています。具体的な目的があったかというと、正直ありませんでした。

 

フランスである必要はなかったのでは?とすら思います。何故なら、日本社会で生きる事は私にとって苦痛そのものでしたし、その原因は私にではなく社会にあると考えていたので、「早くここではないどこかに居場所を見つけたい」という気持ちが常にありました。

そして「ここではないどこか」とは、私にとって「理想の場所(外国)」で極楽の様な場所だったのではないか、と思います。

恐らく幼い頃から旅行好きの母は私たちを海外へよく連れ出したので、すぐ楽な方に流される私の事ですから、そういうある種の「希望」を外国に見出していたのかもしれません。

 

とは言え、フランス(パリ)を初めて訪れた時に強い衝撃を受けた事は事実ですし、最終的に「フランスで勉強したい」と思ったのは私の過去の経験から来るものです。

例えば昔から絵を描く事が好きですし、好きな芸術家の多くは国籍を問わず人生の多くの時間をパリで過ごしています。

また二十歳過ぎたくらいの私は変に血の気が多かった事もあって、ヒュージャックマン主演のレ・ミゼラブルを見てからフランスの「革命」に興味を持つようになりました。当時の気持ちをドラマチックに形容するなら、時代の熱、死に急ぐ若者、民衆の血、そして革命、と言ったところでしょうか。

実際、それらは人権宣言や市民運動もフランスは歴史の中で大きく貢献していて、今日まで世界中の政治制度に大きな影響を残しています。

そういった知識や経験がフランスに来ることを後押したのではないか、と感じます。

 

また一方で他の選択肢(フランス以外の国)は検討したのか?というと、当然しました。

高校卒業してすぐの時も海外の大学に行くチャンスがないかと調べた事があり、特にヨーロッパは学費が安い事はテレビなどで知っていたので、色々調べました。

 

当然外国に逃げ出すからには英語が必要になる事は間違いありません。なので英語圏はかなり時間をかけて調べたのですが、肝心の英語の勉強は続かなかったし、基本的に英語圏は何をするにも費用が恐ろしく高く、また英語を学んで何がしたいのかも曖昧でした。(仏語も同じですが)

 

また英語圏以外ではアートが好きな私にとってイタリアも十分魅力的で、例えば中世に巨匠を数多く生み出していますし、イタリアの街や文化は今も人々を魅了しています。私はピザ屋で働いていた事もあって、訪れてみたい国の1つでしたし、今もまだ訪れる機会に恵まれていません。

 

最終的に決め手となったのは、フランスで得た「体験」でした。それは私にとって文化に対するイメージの様な抽象ではなく、具体的なモノでした。

他のヨーロッパの国々を訪れた事はほとんどないので、よく知らない。イギリスやイタリアにも興味はあるが、イギリスはフランスほどの衝撃は受けなかったし、イタリアは訪れた事すらない。

私にあったのはフランスでの確かな「体験」でした。というより、それしかありませんでした。

それに何よりもフランス語を学ぶ事は非常に興味深い体験であった事が大きいかもしれません。

 

結局フランスで何がしたいか?は相変わらず曖昧なままフランスに到着し、留学生活がスタートしました。

 

 

以上がフランスに来た理由、というよりもフランスに来た時の状況、と言う方が適切でしょう。

 

「何か学びに行きたい」という気持ちはあったものの、当時の私に何を学びたいのか明確な事は何一つ言えませんでした。それにVisaの申請時の渡航の理由に作文を書くのですが、適当に「西洋美術史を学びたい」と書きました。確かに興味はありましたが、エージェントに詰め寄られて無理やり絞り出したハリボテのアイディアでした。

 

確かに今は「社会計量学を学びたい」という目的こそあれ、フランスでなければならない理由は特に思い当たらないんですよね。

実際ロックダウンの時も幾度となく「何故ここにいるのか?」自問しましたが、社会学を勉強したい事以外はさほど思い当たる節はありませんでした。

強いて言えばフランス語が継続できた事でしょうか。確かにフランス語はこれまでの中で最も長続きしている唯一の私の「努力」と言えますが、それはやってみた結果に過ぎません。そういう意味では「フランスでなければならない理由」としては説得力に欠けると思います。

 

そういったぼんやりとした理由の中で1つ言えるのは、フランスに来て日本社会というほぼ絶対的だった世界と距離を置いた事で、より自分の感じている事ややりたい事の輪郭が明確になったと感じています。

これは渡仏前、というより海外での生活を夢見た時から、知りたかった/体験したかったことの様な気がします。

そして距離を置いた中で明確になった事の1つが社会学を学んでみたいという好奇心です。渡仏後しばらくしてからの事でした。

 

ちなみに前回は何故社会学なのか?についても言及しましたが、今回は別なまとまりとして書きたいと思います。フランスにいる事と社会学を学びたい事は私の中で必ずしも結びつかない事に気付いたからです。

 

 

◆まとめ

以上を踏まえてフランスに来た理由を3つにまとめると

・日本社会から逃げ出したかった

・フランスでなければならなかった訳ではない(相対化したかった)

・フランス語が楽しかった

こんな感じでしょうか。

仏語が面白くなければ私の事ですから、フランスに留学することもなかったかもしれませんし、状況を鑑みるとフランスに「漂着した」と表現する方が適切な気もします。

 

 

社会学に興味を持ったきっかけについては、また後日改めて書いてみようと思います。

今回は「フランスに来た理由」が主題だったため「日本社会から逃げ出したくなった理由」については触れませんでしたが、それについても重なる部分があり色々と整理出来るのではないかと期待しています。

 

 

以上、お読みいただきありがとうございました。